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アメリカンゴシックおばさんとしてのLydia Lunch

Lydia Lunchといえば、NYアンダーグラウンド/ノーウェーブシーンを代表する女性で……以前に、この程度のブログでは「ああ、リチャード・カーンのハードコアで、Jim Foetusとファックしてた人だよ」くらいの雑な紹介で構わないと思ったりもするわけですが、Foetus好きの私からしてみれば、色々な意味でなじみのあるアーティストの一人です。今年の頭には、サーストン・ムーア関連などでちょっと話題になったりもしていましたが、実は今年に入って、「Lydia Lunch with Cypress Grove」名義でアルバムを出しています。

日本では殆ど話題になっていないようですが、実はこのアルバム、直球なアメリカンゴシック/ダークフォークに仕上がってしまってるんです。そもそも「A Fistful Of Desert Blues」というタイトルからして直球です。いつのまにこんなことに。


Lydia Lunch & Cypress Grove - Jericho - YouTube

直球。タイトルからも想像つくとは思いますが、ウエスタン調のリズムとアレンジを所々に盛り込んだ、ダークなオルタナティブフォークになっています。カントリー色は薄めですが、このアルバムが凄いのは、アメリカンゴシックとしては全く新しさがないということ。もしかしたら、アメゴシを聴きつけない人には目新しいかもしれませんが、アメゴシリスナーにとってはよくあるタイプかな、という雰囲気。つまり、Death Roots Syndicateのコンピに入っててもそこまで違和感ないわけです。これは逆にすごいことのような気がしますな。

今回組んでいるCypress Groveという人は、ドイツのGlitterhouseから音源を出しているイギリス人ミュージシャン。Lydia Lunchは言わずもがな、このCypress GroveもThe Gun Clubに縁のある人で、「The Jeffrey Lee Pierce Sessions Project」にも参加しています。

アメリカのルーツミュージックに元々存在するワイアードな部分を増幅させることでゴシック性を獲得する、というのがアメリカンゴシックミュージックの王道。とはいえ、アメゴシがある程度普遍的な要素として根付いたのはトラッドやカントリー内部の流行はもちろん、それらを取り入れて行ったThe Gun ClubやBirthday Partyなどの所謂鬼っ子的なアーティストの存在もかなり大きかったことを忘れてはいけません。また、一部ではそこにダークウェーブからの影響、もっと言えばヨーロッパ的なゴスを逆輸入する傾向も見られます。もちろん、この辺りはインダストリアルミュージックもルーツに持っています。このようにアメゴシのルーツとして関連づけられるジャンル全体を見回した上で考えると、リディア・ランチがこのように非常にストレートな形でダークなアメリカーナをやっているのははとても面白く、しかも感慨深いと言えるでしょう。

 

アメリカンゴシックな音楽、といっても「ダークなカントリー」だけでなく、その端っこには「ブラックメタルの要素も感じられる暗いフォーク」もあれば「サイケに近いスピリチュアルなフォーク」まで存在します。その幅の広さとルーツを踏まえた上で、Lydia Lunchをアメゴシおばさんとして認識する人が増えてくれればいいなと思います。

 


Lydia Lunch & Cypress Grove - Revolver (Mark ...

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