Swing The Bloody Plow

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最近聴いたもの #1

最近聴いたものとか発見したものまとめです。

Elliott Brood「Work and Love」(2014)

トロントのオルタナカントリー/インディーバンドの5作目。初期3枚くらいは独特のダークさと枯れ感のあるオルタナカントリーで、そこはかとなくウエスタン調の味わいも面白かったのですが、前作でかなりストレートなインディーロック/フォークになってしまいました。新作もその延長線上にあり、前作に比べても更に潔くストレートな音になっていますが、その潔さ故か非常に良いアルバムに仕上がっています。とにかく曲のクオリティが高い。ややこのバンドにこの音を期待していたかと言われると「いや…」としか言い様がないとはいえ、元々カナディアンインディーフォークのこの手の音は好きなので、方向性は変われどもクオリティの高い新作で一安心です。貼ったのは新譜の収録曲では最も昔の雰囲気が残ってる曲ですので、気になった方は旧作(Ambassodar、Mountain Meadowsあたり)もおすすめです。ELLIOTT BROOD

 

Old Gray Mule「Have Marcy」(2014)

Mississippi Sheiksの「Old Grey Mule You Ain t What You Used to Be」を冠したであろう、テキサスの2ピースなジュークジョイントブルーズバンドの新作2枚。同時にリリースされた「Hump Night 55」の方はリミックスやライブ音源がメインになっているので割愛(でもカッコいいので聴いてね)。「Have Marcy」は「Skinny Woman」からスタートし、戦前/デルタブルースをたっぷり聴けるアルバム。この界隈の2ピースに多いトラッシュ/ガレージな要素は無く、カントリーブルースとはいえ、ソウルやファンク、ゴスペル色の強いアプローチが特徴。ボーカルギター+ドラムの2ピースながらアコーディオンやチューバなどの楽器も多いに彩りを添え、ニューオリンズ的に賑やかな音になっています。NMAほど優等生っぽくなく、それなりに品がないのも魅力ですねRL Burnside, Junior Kimbrough, T Model Fordなどのブルースマンや、ハードロック調ではないブルースロックがお好きな方にも楽しめると思いますよ。Old Gray Mule

 

Marty O'Reilly & The Old Soul Orchestra「Pray for Pain」

もしかしたら今年一番の掘り出し物かも。The Good Luck Thrift Store Outfitの対バンで知ったサンタクルーズのSSW。& The Old Soul Orchestra名義で3ピースとなります。これもまたブルース系ではあるのですが、全体的にはオールドタイム寄りの何かである、と言った方がいいですね。上に貼ったアルバムの一曲目「Dempsey」はハスキーなボーカル、ジャジーなビート、そしてフィドルと、アーリーなアメリカンミュージックを(あまりレイドバックさせず)演っていていきなりのっけからカッコいい。前半のハイライトとなる素晴らしい「Smokestack Lightning」は必聴。盛り込まれた要素を抜き出して説明しても『よくあるタイプ』としか言えない音楽ではあるのですが、演奏とアレンジのセンスの良さはずば抜けているので、その辺りの妙はぜひ聴いて確かめて頂きたく。一口にオールドタイミー寄りと言ってもThe Devil Makes ThreeやWoody Pinesのようなレイドバックしたタイプとは違い、ジャズの要素が強い一方でブルーグラスの要素がないのも特徴ですね。個人的にはDaniel Martin MooreMark Growdenのちょっとダークなブルースのエッセンスを足した感じ、といったところでしょうか。日本のルーツ系リスナーの何人がMark Growdenを知っているのかは疑問ですが…

一つ前のアルバムでは「St. James Infirmary」も。いろんなアーティストのSt.Jamesをコレクションしている私ですが、これ、好きなSt.Jamesベスト10に入れる勢いですよ。Marty O'Reilly

 

 

 

スウェーデンのAlaskaのお話

今年、Movits!が春にアメリカツアーを行った際、現地でヨッケが受けたインタビューの中に「ミュージシャンになってなかったら、今頃何してると思う?」という質問がありました。それに対するヨッケの回答は「俺は大学に残って研究を、アンダシュはヴィンテージの腕時計の修理屋を、ヨハンはジャマイカに行ってイタリアンのシェフになろうとしてたんじゃないかな」とのことでした。そんなジャマイカでイタリアンなスウェーデン人による2MCのヒップホップデュオの名前がアラスカ、とはこれ一体どういうことなんでしょうかね。

 

と、いうわけでAlaskaについて。

Movits!のファンにはお馴染み、同郷のラッパー“Zacke”とMovits!のフロントマンであるヨハンが組んで、DJ/プログラミングのアンダシュがトラックを担当するAlaskaは、Movits!に比べるとがっつりヒップホップ色の強いサイドプロジェクト。そもそもなんでAlaskaなんて名前にしてしまったのか、文字媒体では触れられていないようなので未だに謎ですが、ヨハンクオリティを感じますね…(リスニングが壊滅的にダメなので、音声インタビューで言ってるのを耳にしている可能性はあるが、いずれにせよそれではわからない私…)。

さて、このAlaska、残念ながら日本ではなかなか話題にはなりませんが、Movits!とはまた雰囲気の異なるヘヴィでパンキッシュなヒップホップに仕上がっており、かなりカッコいい。リリックもMovits!よりストレートに社会的な問題を歌う傾向が強いのですが、そのストレートさがパンキッシュな味わいにも一役買っていると言えます。政治色の強さについては、リリースがスウェーデンの総選挙と重なっているのも関係していた様子。こちらのインタビューでは、ヨハンに「自分自身をロビイストだと見なしていますか?またリスナーの政治に対する認識を変える可能性については?」といった旨の質問も出ていました。それに対してヨハンは「そう思ったことはない」と答えていますが、音楽を作る際に様々な社会的問題をテーマにすることは自分に合っている、またそれらがリスナーに影響を与えるチャンスもあるだろうとも述べています。さらに、示唆的でないヒップホップは苦手、とも。


Alaska - Bomberjacka - YouTube

音、もといトラックに関しては、バンドサウンドらしさを求めるMovits!とは違い、打ち込み感を全面に押し出しています。その一方で、Movits! / Zackeの作品ではこれまで取り入れてこなかったタイプのメローなフックも随所に挟み込まれ、強く印象に残ります。ヨハンとZackeそれぞれのMCとしての魅力はもちろん、アンデシュの元々の音の好みや得意分野も垣間見えるのが面白いですね。本人たちもインタビューでは、「ヒップホップにハマった17歳の頃のノリ」的なニュアンスのことを言っていましたが、こういうヒップホップ小僧な感じが、あまりMovits!をヒップホップとして消費していない日本で本家のようにウケない原因の一つのかな、とも思います。


Alaska - Saudi ft. Dim Out - YouTube

 これまでも事あるごとに絡んできたMC2人ですが、昨年末のベルリンでのライブの楽屋で、「俺のジャケット♪お前のジャケット♪」という非常にどうでもいいフレーズを使ってフリースタイルで遊んでいたところから、「そろそろ一緒になんかやってもいいんじゃね」と思い立ったそうです。鉄は熱いうちに打て、と早速トラックメーカーにアンダシュを引き入れ、曲作りを開始。6月にEPリリースの予定が、ボリュームが増えたのか8月にアルバムへと変更。鉄は熱いうちに打て!の突貫工事であったようです。アートワークもろ被り事件などもありましたが、スウェーデンでの所属レーベル「Goldenbest Records」のサポートもあり、色々面白いゲストを呼んだり、派手なレコ発(なぜかヘリコプターの発着場で)をやったりで、楽しくやっているようです。そのうちゲスト陣の紹介もやりたいです…やれればいいな……

 

 

リリースは本国でも今のところデジタルのみ。日本のiTunesでも買えますよ。

Alaska

Alaska

  • Alaska
  • Hip Hop/Rap
  • ¥1500

 

リンクを貼った部分以外のソースはだいたいこのインタビューから。
http://www.kingsizemagazine.se/karusellen/intervju-alaska/

※訳、といったほどでもないですが、インタビューの内容については念のため話八分くらいで思っておいて頂ければ幸いです。すみません…

Death Roots Syndicateのコンピ

Twitterでも再三言ってるし、Tumblrでも一度記事を書いてるのですが、新しいコンピが出たので、改めてDeath Roots Syndicateのお話です。

 

ゴシックアメリカーナ/アングラカントリー界隈は狭くてニッチな世界のようでいて、実はかなり広大なマップの世界。なのでもちろん界隈の中でも流行り廃りが存在します。私がこの界隈に興味を持ち始めた頃はDevil's Ruinというレーベルがシーンの牽引者で、このレーベルの好みがそのまま流行であるように見えていました。気を吐いているレーベルと、そのレーベルの傾向がマイナージャンルの中のメインストリームを形成するのはよくあることかと思う訳ですが、そのせいでDevil's Ruinが活動を停止してしまってから、そこに所属していたアーティストの名前を目にする機会はめっきり減ってしまいました。そのかわり、現在はMuddy RootsFarmageddonと言った、フェスを中心にアウトロー系やヒルビリー系のアングラカントリーを紹介していくレーベルが気を吐いているので、やはり主流はそちらへ引きずられています。

 

そんな中で、昨年あたりからDevil's Ruinの傾向を受け継ぎ、アングラカントリーの中でもヨーロッパ系のゴスを再輸入したタイプやローファイブルーズ系をコンスタントに紹介しているレーベルがDeath Roots Syndicateです。現在はダウンロード元をインターネットアーカイブに移していますが基本的に音源は無料DLでの配布なので、「ゴシックアメリカーナなにそれ」って人にも気軽に聴いてもらえるのが良いところ……いえ、無料だからと言って気軽に聴いてくれる人がおいそれといるようなジャンルではありませんけれども……

 

DRSは所属アーティストの音源を配布するだけでなく、コンスタントにコンピをリリースしているのも魅力。先日3枚目のコンピもリリースされました。ざっと収録アーティストを見ても、かなり楽しく(明るい曲は入っていませんけれど)聴ける、間違いないチョイスですね、相変わらず。ローファイブルーズ、ダークカントリー、アポカリプティックフォークなど、そういったルーツミュージックの中でもまさに微妙な線をついてくるアーティストをまとめて聴けますので、興味のある方、これから聴いてみようという方には大変おすすめです。一つくらいは「あっこれ」ってアーティストがいると…思います…うう…居ますように。

 

上に埋め込んだのが3枚目のコンピ。今回の目玉はなんといってもアポカリプティックデスウエスタン(なにそれ)なSons of perditionのフィル・コリンズカバー。ラストのそれだけでも聴いて行ってください。

 

あと、DRSでは定期的にウェブラジオもやっています。結構な長丁場なのですが、こちらはもうちょっと広範囲に渡ってアングラカントリーを紹介していますので、お時間のある方はぜひ。こちらもインターネットアーカイブで過去エピソード(現在は#9、10)をzipで用意してくれていますよ。


☢ Death Roots Radio ☢ : DJ GoatSerpent : Free Download & Streaming : Internet Archive

 

個々のアーティストについてはまたの機会に。

 

 

アメゴシトークイベントのお話

先日、といってももうかなり前になりますが、8/23にkineatticさんにて開催された「AFTER HOURS」というイベントにゲストで呼んで頂きました。

 

「AFTER HOURS」は基本的に音楽、映画、カルチャーのトーク&DJイベントで、その回のテーマは「アメリカンゴシック」。私は「なんだか知らないが妙にアメリカンゴシックとゴシックアメリカーナについて詳しい人」ということで呼んで頂いた、というわけです。

 

一通り、ゴシックという言葉の成り立ちから、ゴシックロマンスがアメリカに渡り、アメリカンゴシックという文学研究における一つのジャンルを形成するまでをざっくりと説明した上で、アメリカ音楽と映画と文化におけるゴシックについてお話させて頂きました。「悪魔のいけにえ」から「2000人の狂人」、「悪魔の調教師」といったずんどこ田舎映画から、「ロング・アイド・ジーザスを探して」などの音楽映画、マーダーバラッドなどのトラッド、16HorsepowerやSlim Cessna's Auto Clubなどのアメゴシバンド、黒人差別、近親相姦、保守とリベラル、主流と周縁、フロンティアライン、岡山と群馬のヤンキーまで、様々な話題で語り倒しの2時間でございました。

 

来て頂いた方からも楽しかった、と言って頂き大変うれしかったのですが、ツイッターのフォロワーさんのうちのお一人、伊藤螺子さんが、せっかくですから、と独自にトークの内容をまとめてnoteで公開してくださってます。多謝多謝!

 

「Gothic Of It All ~アメリカン・ゴシック・ソングス・アンド・ムービーズ~」ざっくりまとめノート①

「Gothic Of It All ~アメリカン・ゴシック・ソングス・アンド・ムービーズ~」ざっくりまとめノート② 

 

さすがに本職の方……読みやすく且つ面白いまとめにして頂きありがたい限り…

 

 

トーク後はDJタイムもあったのですが、私の方はいつもの通りCD-RDJで。比較的ストレートな選曲でお送りいたしました。その際かけた曲は、8tracksにまとめてあるのでよろしければこちらも暇つぶしにどうぞ。

 

0823 playlist from inamoto on 8tracks Radio.

 

 

どうせすぐ飽きるんですが

やはりブログという形態は強い、と最近ぼんやり思うことがありまして、久しぶりに開設してみました。

 

その昔こんなブログ(http://inaq.blog105.fc2.com/)をやってたわけですが、こういうのはもう書けないにせよ、短文でもいいからアメゴシと一部ヒップホップの情報を載せて行くところが欲しい、と。基本的には私の好きなもののうち、googleで日本語指定して検索かけても、あまり新しい情報が出て来ないような音楽について載せて行くつもりです。pixivのマイナータグを一人で増やす、みたいなことになりそうですが、そこはそれ、日本語記事のヒット数を上げることは意外と重要な気がするんですよ。そもそも検索する人がいないのでは、という疑問は置いといても。

 

と、なると、基本的にはゴシックアメリカーナ/アングラカントリーと、スウェーデンのヒップホップ関連が中心になるわけで、なにこの…なにこのバラバラ感……好みの乖離が激しい昨今ですが、前者は普通に音楽好きとして、後者はアイドルとして消費してると考えて頂ければ幸いです。

 


The Louvin Brothers - Satan is real - YouTube